きつねにっき

推しに引かれて善光寺

林蘭丸というひとのこと おわりに

 以上、DOUBTと蘭丸の異質性について論考してきました。結果、DOUBTも蘭丸も、HiGH&LOWにおける喧嘩によるコミュニケーションの埒外にいると同時に、HiGH&LOWの理念の外にいるということが示され、彼らの異質性はこれに基づくディスコミュニケーションに起因するということが説明されたことと思います。

 蘭丸はROCKYの対比物として完膚なきまでに悪役であり、幼稚なキャラクターです。しかし、このようにシステマティックに作られた蘭丸を中村蒼が人間として演じ、ザム2ラストシーンでの笑顔、平井の焦燥という描写によって、本編だけでは処理しきれない情報が発生しました。「悪」「幼稚性」という要素の隣に大きなブランクが発生したのです。さらにインタビューという場で中村蒼が大暴れしたため観客(というか主に筆者)の蘭丸に対する情報は不完全な形で補完され、混迷を極めています。

 ともあれ、蘭丸の持つ異質性は蘭丸という登場人物を我々がどう「消費」するかという点においても着目すべき点であると主張します。彼はアクションの華々しさでは一見劣るかもしれない。しかし彼のアクションがROCKYと被るのには意味がある。ボスとしては一見善信に食われている。だが彼は子どもの世界の王様であり、彼が大人に倒されることは、物語に大きな展開をもたらすキーポイントとなりました。

 蘭丸を、ひいてはHiGH&LOWを読み解く方法は一様ではありません。本稿がHiGH&LOWの読解の多様性を担保する一助となれば幸いです。

 末筆になりましたが、本稿は全て敬称略で記しました。

 とにかく、HiGH&LOW THE MOVIE 2 END OF SKYは2月21日発売です!